空手の発勁

発勁(はっけい)とは何でしょう。格闘技好きなら、一度は聞いたことがあるでしょう。中国武術でよぼよぼのおじいさんが軽く突いただけで、大男が吹き飛ぶ、そんなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし、発勁はそんな超能力的なものではありません。頸(けい)とは、「運動量」のことです。すなわち、運動量を発生させるということです。しかも物理学的に非常に効率の良い体の使い方でです。例えば正拳突き1つとっても、棒立ちから腕だけで突くより、腰の回転を利用して突くほうが効くのは想像に難しくないでしょう。さらに脚からの回転も加えたらどうでしょう。そのように膝→股関節→腰→肩甲骨→肘→手首→拳→ターゲット、というようにうまく運動を連携することで、小さな力で大きな力を生むことができます。さらにターゲットに当たったときの各部位の締め方、タイミングも重要です。例えば当たったときに肘が曲がっていれば、力は全部肘で吸収されて逃げてしまいます。このように力を上手く繋ぐために必要なことがあります。それは力まないことです。力んだところで、力の伝達が止まってしまうのです。なので、力の損失なく、うまく発しきれたときは、力感や手応えを感じません。これを簡単に実感することができます。壁を正拳突きで殴ってみてください。力んで軽く殴った場合と、全然力まず手をムチのようにした場合とで、どちらが手が痛いか。結果は後者の方が痛いのです。まったく力感無いのにです。それだけ壁からの反作用も大きかった、すなわち、あなたが壁に与えた力が大きかったことになります。そんな発勁を実践している動画を紹介します。

武颯塾 茂呂隆氏の発勁実演

空手ではありませんが、陳式太極拳の流れを組む、総合武術の武颯塾(むそうじゅく)の動画です。脱力感あふれる動きから発せられる運動量がすごいですね。2人の大人がおもわず倒れこんでいます。倒れ方がわざとらしいので、いかさまっぽく見えてしまうとしたら残念ですが。。全然力を使っていないように見えますが、当たった瞬間に体を硬化させ、力を伝達しきっているように見えます。

極真空手の寸勁瓦30枚割り

寸勁(すんけい)は非常に短距離からの打撃で、発勁の1つです。寸勁による瓦割りは、コツがあります。

  • 重心を高く構える
  • 胴体を落とし始めたときに掌底の力が瓦にかからないようにする
  • 力を加える瞬間は、肘、肩、胴体を一体化する

何のこっちゃという感じでしょうか。。しかし、力学的に非常に詳細に解説されている本がありますので、知りたい方はそちらを参考にしてください。格闘技「奥義」の科学という本です。

見事に瓦が崩れ落ちています。発勁の全てがうまく連動し、力がターゲットに発動された状態です。

太極拳の発勁



「空手の発勁」への3件のフィードバック

  1. いきなり失礼します。
    私は韓国のソウルで極真を鍛えている全医烈(ゾンウイヨル)と申します。
    いつも空手マニアさんのBLOGで韓国では聞けなかったいろんな空手に特に極真に関するお話を聞いて、ものすごく感動しています。

    でも、私は日本語ができまして空手マニアさんの書いた内容を読みながらいろいろ勉強したり感動したりしてますが、私の道場のほかの人はそれができなくて、いつも残念だと思っております。

    それで、生意気でご勝手なことで申し訳ありませんが、もしよろしければ、空手マニアさんのBLOGの内容を翻訳して皆と共有してもよろしいでしょうか?(もちろん空手マニアさんのBLOGからの内容だということははっきり表示いたします。)

    もし、強化を得ることができましたら、今まで韓国の中で限られた情報で鍛えてた皆が、本場の空手に関してより深く理解できる良い機会になるはずだと思います。

    何卒、よろしくお願いいたします。

    1. 管理人のnobitaです。
      全医烈さん、コメントありがとうございました。
      お役に立てて、とても嬉しく思っています。
      ぜひ、韓国語に翻訳していただいて、ご活用ください。
      極真空手の理念は、「頭は低く、目は高く、口を慎んで心広く、孝を原点として他を益す」ですから、
      全さんの行動は極真空手そのものですね。すばらしいと思います。
      全さんのブログも、とても楽しく拝見しました。
      また、時々に見に行きますね^^

  2. お返事、本当にありがとうございます。
    国は違っても韓国の極真人のみなも総裁のお話を心に持って頑張っております。
    2006年前後にあった韓国の極真ブームが内部の戦いによる分裂でいきなりさめてしまい、
    長い間、空手を愛する韓国の極真修練生が鍛える場所がなくて苦労をしていました。。。

    それが、何年か前からプサンのほうからまたつぼみができ、やっとソウルのほうにも少しずつ流派は違っても
    極真の鍛えられる場所が増えてるところです。
    それで、少しずつ昔極真を鍛えてた人たちも戻ってきてる様子で、私もその一人でした。。

    韓国では国と言葉という壁があり、空手の修練だけではなく極真に関する情報自体が少ないし、
    さらにその精度も確信できない環境で、空手マニアブログのようなところはものすごく貴重です。

    もう一度、共有の許可に感謝いたします。
    これからも、よろしくお願いいたします。

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